近代科学社

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参加型社会の決め方公共事業における集団意思決定

編集 木下 栄蔵
編集 高野 伸栄

近年、公共事業に対する批判が高まり、その声は国民の空気になりつつあります。それらの批判は謙虚に受け止めなければなりませんが、一方で都市部の社会インフラが国際競争力を失っているのも事実です。

そこで、公正で有効な社会インフラを整備するためには新しいパラダイムを確立する必要があります。それは1990年からの失われた10年強を総括し、その以前のパラダイムから新しいパラダイムへの創造を意味します。すなわち、一言でいえばオペレーショナルマネジメントから戦略的マネジメントへの変更です。
このようなパラダイムに従えば、公共事業採択(優先順位)は代替案の創造と意思決定手法により評価される必要性が認められます。我々はこれまで、以上の用件を念頭に置き、公共事業におけるPI、市民参加型ワークショップの運営などで生じる現実的課題と集団意思決定理論(合意形成モデル)との位置づけを模索し、モデルの応用の可能性と現実的課題の解決のために必要とされる理論研究の方向性について議論を重ねてきました。

 本書は、以上のような経緯を経て生まれたもので、種々の分野で「意思決定」を研究・勉強されている研究者や学生、実際の業務で「意思決定」解析等に従事されている人たちのためにわかりやすくまとめたものです。

紙の書籍¥3,800定価(税別)

基本情報

発売日 2004年7月25日
ページ数 232 ページ ※印刷物
サイズ A5
ISBN 9784764910430
ジャンル その他
タグ 教育機関向け
電子書籍形式 販売なし

主要目次

第1章 序 章
1.1 バランスシート不況における社会資本整備の役割
1.2 参加型社会の決め方
1.3 各章の内容と本書の構成

第2章 これまでの公共事業における決め方
2.1 これまでの公共事業の進め方
2.2 参加型計画の必要性と克服すべき課題

第3章 集団で考えるためのツール
3.1 ブレーンストーミングとKJ法
3.1.1 ブレーンストーミング
3.1.2 KJ法
3.2 SCA(戦略的選択分析)
3.2.1 SCAの手順
3.2.2 空港拡張問題
3.2.3 問題の構造化
3.2.4 計画代替案の比較
3.2.5 具体的施策の決定
3.2.6 おわりに
3.3 PCM参加型計画手法
3.3.1 PCM手法とは
3.3.2 PCMワークショップとその基本ルール
3.3.3 関係者分析-人から始まる
3.3.4 問題分析-間題の原因はどのように広がっているのか
3.3.5 目的分析-望ましい姿への解決手段を考える
3.3.6 プロジェクトの選択
3.3.7 PDMをつくる
3.3.8 PCMの特徴と得失
3.4 3DCG・VR
3.4.1 合意形成における情報の説明方法
3.4.2 完成イメージの具現化
3.4.3 個別の要望に対するスムーズな対応
3.4.4 合意形成における3DCG・VR
3.4.5 まとめ

第4章 話し合いの限界と専門家機関への期待
4.1 話し合えば決まるのか?
4.1.1 ワークショップは万能か?
4.1.2 「コミュニケイティブ・プロセス」と計画決定
4.1.3 例題としての研究室配属問題
4.1.4 コミュニケイティブ・プロセスの限界と誤解
4.2 多様な主体と第三者機関
4.2.1 重要な当事者以外の視点
4.2.2 複雑な社会・多様な主体
4.3 参加型社会の落とし穴
4.3.1 装いとしての民主的プロセス
4.3.2 社会的フリーライダーの存在
4.3.3 アンチ・プランニング・ムーブメント
4.4 第三者機関を考える
4.4.1 社会的フリーライダーを許さない
4.4.2 第三者機関に対する日本人の誤解
4.4.3 第三者機関の先進事例
4.4.4 裁定の難しさ
4.5 おわりに

第5章 問題記述型モデル
5.1 効用理論に基づいたモデル
5.1.1 はじめに
5.1.2 効用関数
5.1.3 多属性効用関数
5.1.4 倫理的競合解消のためのグループ不効用関数
5.1.5 集団意思決定における倫理的競合解消のモデリング
5.1.6 おわりに
5.2 ゲーム理論による集団意思決定モデル
5.2.1 ゲーム理論とは何か
5.2.2 コンフリクト分析手法

第6章 合意を導く「決め方」の条件
6.1 合意形成における社会的ジレンマ
6.1.1 合意形成の問題はなぜ“問題”なのか
6.1.2 人はなぜ合意できなくなってしまうことがあるのか?
6.1.3 ゲーム理論による問題記述
6.1.4 どこにでも潜んでいる社会的ジレンマ
6.2 社会的ジレンマをどうやって乗り越えるのか?
6.2.1 問題解決の視点へ
6.2.2 二つの解決方法-構造的方略と心理的方略
6.2.3 合意を導く“決め方”の条件
6.2.4 ジレンマがなくなる日

第7章 問題解決型モデル
7.1 AHP
7.1.1 AHP手法の概要
7.1.2 AHP手法の適用例
7.2 集団AHP
7.2.1 集団AHPにおける四つのシナリオ
7.2.2 集団意思決定ストレス法
7.2.3 仮想事例「次世代自治体情報サービスの住民参加型協議」
7.2.4 集団AHP手法の適用上の留意点
7.3 修正型AHP
7.3.1 修正型AHPとは
7.3.2 修正型AHPのプロセス
7.3.3 地下通路整備における集団合意形成問題への適用例題
7.3.4 修正型AHPの適用上の留意点
7.4 ファジィAHP
7.4.1 ファジィAHPとは
7.4.2 ファジィ測度の定義
7.4.3 説明可能度について
7.4.4 U評価,L評価,N評価の定式化
7.4.5 ファジィAHPによる千歳川流域治水対策の評価
7.4.6 ファジィAHPによる千歳川流域治水対策の合意形成

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