Interviewee
横山 良平(よこやま りょうへい)1982年 大阪大学大学院工学研究科博士前期課程機械工学専攻 修了
大阪大学工学部産業機械工学科 助手
1988年 工学博士
1990年 大阪府立大学工学部機械工学科 講師
1992年 同 助教授
1994〜1995年 ミシガン大学,カーネギーメロン大学 客員研究員
2005年 米国機械学会 フェロー
2006年 大阪府立大学大学院工学研究科機械系専攻 教授
2015年 日本機械学会 フェロー
2017〜2019年 大阪府立大学 工学域長
2023年 大阪公立大学 名誉教授
専門
機械工学,エネルギーシステム工学,特にエネルギーシステムの分析および最適化
主要著書
『コージェネレーションの最適計画 ―インテリジェント・フレキシブル・コージェネレーションを目指して―』,伊東弘一・横山良平(著),産業図書,1990.
『Cによる理工系解析の数値計算 ―基礎からの展開―』,横山良平(著),近代科学社Digital,2023.
『エネルギー解析の基礎 ―物質からシステムまで―』,横山良平(著),近代科学社Digital,2025.
著者の横山 良平先生に著書の特徴や教科書の使い方のポイントなどをお伺いしました。
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Q. どのようなことを意識して『工学初学者のための熱力学入門』(以下:本書)をご執筆されましたか。
横山ー一般的に、熱力学は理解しにくい科目と言われています。主な理由は、複数の状態量の関係の多くが非線形の数式で表され、それらをイメージとして理解することが難しいことでしょう。一方、既存の物理学の基礎としての熱力学の書籍では、多くの場合状態量の関係は概念図と数式によって示されていて、具体的な数値を用いた図によってはほとんど示されていません。本書では、近代科学社の本書のウェブサイトに公開した補足資料も含めて、状態量の関係を具体的な数値を用いて3次元および2次元の図で示したり、理論を適用した結果を具体的な数値で示すことによって、内容の理解を助けるようにしました。また、熱力学を理解する上で基本的に重要と思われる事項を道標としてまとめ、読み進めるうちに道に迷いそうになったときに、読み返せるようにしました。
Q. 教科書として使いやすいように工夫した点を教えてください。
横山ー第2章〜第8章では、例題として適切なものが考えられる場合には、各節あるいは各項の内容に関連した合計32題の例題を設け、内容の理解を助けるようにしました。また、各章末には合計64題の問題を設け、本文の内容を発展させたものや,調査をして解答しなければならないものも含め、本文で書き尽くせていない内容を補足するようにしました。なお、章末問題の略解は近代科学社の本書のウェブサイトに掲載しています。略解としては、最終結果だけではありませんが、本文や例題での説明に比べて、敢えて数式の引用や展開を省略していることも多く、読者の学びにも役立つようにしました。さらに、例題および章末問題ともに、アイコンによって問題を類別し,選択しやすくしました。
Q. 教える立場での本書の使い方のポイントなどがあれば教えてください。
横山ー90分/回×15回程度の講義の教材として本書の全章を使用するには、時間が不足するでしょう。熱力学の基本的内容の修得には第2章〜第4章は必要不可欠ですが、第5章〜第8章あるいはそれらの一部は必要に応じて取捨選択する必要があるでしょう。一方、物質の実際の性質を理解してもらうために、狭義の理想気体に限定せずに、広義の理想気体およびファンデルワールス気体についても記載しました。ファンデルワールス気体については第2章、第5章、および第6章の一部の節にまとめて記載していますので、理想気体のみに絞るために、それらを省略することができるでしょう。また、本文および例題では狭義の理想気体と広義の理想気体について併記していますが、必要に応じて狭義の理想気体のみに絞ることもできるでしょう。
Q. 自習など自学で使うときの本書の使い方のポイントなどがあれば教えてください。
横山ー3でも述べましたように、熱力学を修得するためには、第2章〜第4章は基本的で最低限必要な内容と考えて下さい。まずはこれらの内容を十分に理解して下さい。第6章〜第8章では第2章〜第4章では扱わない状態変化を扱うため、その前に第5章では第2章〜第4章の状態量によって表される異なる状態量の関係式について述べています。そのため、第2章〜第4章を十分に修得した上で第5章〜第8章を読み進めるのが良いでしょう。なお、3でも述べましたように、対象とする気体については、狭義の理想気体、広義の理想気体、およびファンデルワールス気体の順に展開していけばよいでしょう。また、読み進めるうちに道に迷いそうであれば、いつでも第1章を読み返し、整理しながら読み進めて下さい。
Q. インタビューをお読みいただいた皆様へメッセージをお願いします。
横山ー熱力学は理解しにくい科目と思われがちですが、理解し適用しますと面白さが味わえると思えます。著者はエネルギーシステムの解析と最適化に関する研究に長年取り組んできましたが、基本になるのが熱力学による物質の状態変化であり、そこから機器やシステムを構成する各機器要素の特性、さらに多種多様な機器要素から構成される機器やシステムの特性を理解できるようになります。このような経験に基づき、近代科学社から『エネルギー解析の基礎 —物質からシステムまで—』も出版しました。必ずしも専門的ではなくても、いくつかの章末問題に取り上げていますように、皆様の日常生活などの身近な事で、環境やエネルギーに関連して熱力学を適用すれば理解が深まる事があるはずです。ぜひ熱力学を修得され、熱力学の面白さを味わって頂ければ幸いです。
横山先生お忙しい中、誠にありがとうございました。
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【株式会社 近代科学社】
株式会社近代科学社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大塚浩昭)は、1959年創立。
数学・数理科学・情報科学・情報工学を基軸とする学術専門書や、理工学系の大学向け教科書等、理工学専門分野を広くカバーする出版事業を展開しています。自然科学の基礎的な知識に留まらず、その高度な活用が要求される現代のニーズに応えるべく、古典から最新の学際分野まで幅広く扱っています。また、主要学会・協会や著名研究機関と連携し、世界標準となる学問レベルを追求しています。