近年、公共事業に対する批判が高まり、その声は国民の空気になりつつあります。それらの批判は謙虚に受け止めなければなりませんが、一方で都市部の社会インフラが国際競争力を失っているのも事実です。
そこで、公正で有効な社会インフラを整備するためには新しいパラダイムを確立する必要があります。それは1990年からの失われた10年強を総括し、その以前のパラダイムから新しいパラダイムへの創造を意味します。すなわち、一言でいえばオペレーショナルマネジメントから戦略的マネジメントへの変更です。
このようなパラダイムに従えば、公共事業採択(優先順位)は代替案の創造と意思決定手法により評価される必要性が認められます。我々はこれまで、以上の用件を念頭に置き、公共事業におけるPI、市民参加型ワークショップの運営などで生じる現実的課題と集団意思決定理論(合意形成モデル)との位置づけを模索し、モデルの応用の可能性と現実的課題の解決のために必要とされる理論研究の方向性について議論を重ねてきました。
本書は、以上のような経緯を経て生まれたもので、種々の分野で「意思決定」を研究・勉強されている研究者や学生、実際の業務で「意思決定」解析等に従事されている人たちのためにわかりやすくまとめたものです。